残酷なこの世界は私に愛を教えた
暗くなった田舎道を、先輩の横で歩く。
今日は、何を話してたんだっけ?
なんて忘れてしまいそうになるほど、他愛ない話ばかりした。
先輩のクラスメートの話、芸能人の話、先輩の好きなアーティストの話。時には政治問題にも話題がそれて。
ほんとに、下らない話。
だけど先輩のトーク力に、ずっと笑わせられていた。
「送るよ」
私の降りる駅に着いて、先輩が言う。
私が首を降っても「えっ、でも…」と食い下がる先輩を、ホームから車両の中に押し返した。
「じゃ、これ」
ほんとに、ドアが閉まる直前。
「何かあったら……」
先輩の声は、そこで途切れる。
――クシャ
手の中には、先輩の電話番号が書かれた紙切れが入っていた。