残酷なこの世界は私に愛を教えた
「愛珠ちゃん……隼人……」
「りーさん……!」
「ねーちゃん!」
目の前で、りーさんが目を開けた。
それ以上は何も言わず、ただ力ない笑みを浮かべた。
私はその人が来るのを待っていた。
りーさんに危害を加えた人が来るのを。
絶対に来るという保証はない。
むしろ常識的に考えたら来ないだろう。
それでも何故か待っていた。
来てほしかった。
来てほしくなかった。
その人じゃないと思いたかった。
確認したかった。
でも、きっと来たならばその人だ。
他の人なら来ない。
そう直感した。
矛盾だらけの気持ちのなかで、隼人の腕に支えられていた。
実際に待っていたのは20分程だったが、私には2時間にも3時間にも感じられた。
その人は、私の思いを裏切るように、ある意味思いに応えるように現れる。
――ガラッ
突然ドアが開く音がして、私達は振り返る。
そこにいた人は、私と目があった瞬間引き返そうとした。
「――またそうやって逃げるの?」
その人は私の声に足を止める。
「おい、愛珠?」
隣で何も知らない隼人とりーさんは疑問の表情を浮かべている。
私はいつの間にか立ち上がっていた。
「ねえ、お父さん?」