残酷なこの世界は私に愛を教えた
「ちょっとあなた、私の夫と不倫するなんてどういうつもりなの!?」
「え……?」
りーさんは驚いている。
彼は、少し慌てたようにりーさんの前に立つ。
母親は今にもりーさんに刺し殺しそうな剣幕だ。
「いや、俺お前と結婚してねえけど」
その一言で場が静まり返る。
この齟齬の全てを知っているのは――私だけ。
「何を言ってるの?」
「だから、俺はお前と籍を入れた覚えはねえって言ってんの」
「はあ!? 嘘言わないでよ!! 愛珠だってあんたとの子……」
「あいつは俺の子じゃねえ!! それにお前、結婚とか何とか……頭おかしいんしゃねえか!?」
――自分の子供――
それが彼の怒りの引き金となるらしい。
それまでとは桁違いの剣幕で言葉を吐く。
「いや、あんたの子だよ! 言い訳しないでよ! 私が一番分かるに決まってんでしょ!」
「うるせえ! 俺は知らねえって言ってんだよ!」
父親と母親は次第にヒートアップしていく。
もう、我慢の限界だった。
「いい加減にしろよっ!!」
気がつけば、私は叫んでいた。
「誰が私の親だとか、これっぽっちも興味なんて無い!! 今はそんな話じゃ無いでしょ!?」
生まれて初めてなんじゃないかってくらい、大きな声が出た。