残酷なこの世界は私に愛を教えた




「ごちゃごちゃうるさいんだよ!! あんたらなんか……」



母親が暴れる。“あんたら”というのは父親とりーさんのことだろう。いや……私も入っているだろうか。



私の言葉で何か変わるとは、最初から期待などしていない。


彼女は彼の方へ掴みかかろうとする。




その光景は、正に地獄絵図。




でもそれを見ても、もう驚かない。




非日常的で暴力的なその映像は、スローモーションで断片的に目に入った。




父親は驚いてりーさんの前に立ち、隼人は私の半歩前に出て守ってくれる。




警備員さんが母親を抑えているので彼女は最初から動けないのだが。



「何よ! 放して、放してよ! あんたらなんか、殺してやるっ!!」



相変わらず彼女は狂っていた。



彼らが警備員に押さえられ連れていかれた後も、彼女の声――耳を覆いたくなるようなその声がずっとそこに残っていた。







そのうち警察が到着し、母親と父親は連行された。



彼らはまるで台風のようだった。



私はパトカーに乗り込む父親に叫ぶ。


「芽里さんとその子を愛せないなら、もう二度と姿を見せないで!! もう二度と芽里さんを傷付けないで!! 私達の前に現れないでっ!!」



「……」



彼は何も言わなかった。





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