残酷なこの世界は私に愛を教えた
事故
帰り道
《side隼人》
ああっ。
電車の中で、頭を抱える。
電話番号渡したけど、あの子今声でないんだから意味ないじゃん!
我ながら馬鹿な凡ミスしたなあと呆れる。
……だって、と言い訳。
なんか心配だったんだよ。なんだか、無頓着で。
命さえも執着せずに簡単に手放してしまいそうな、そんな危険な無気力さを感じていた。
――でも。これは偽善、になるのか。
何が正しいのか分からない。でも取り敢えず次会ったら、誰もが使っているメッセージアプリで連絡先を交換しておこう。
丁度、改札を出た時だった。
――♪♪♪
ズボンの中のスマホが鳴る。
メッセージアプリの無料通話では無い。
……知らない番号。
もう高瀬さんが掛けてきたのだろうかとも思ったが、失声症を患っている彼女が掛けてくる筈も無いと否定する。
誰だ?
「……もしもし? 高瀬………? ………いや、違います、けど……。はあ…………。えっ? あの、何があったんですか?………えっと、まあ友人、と言いますか…………」
「―――――――えっ!?」
駅内に、俺の声が響き渡った。