残酷なこの世界は私に愛を教えた
実際には籍なんて入ってないし、家にお金を入れるなんてことも無かった。
私がそれを知るのはもっと後だが。
母親は、私が学校以外で家の外に出るのを許さなかった。
『友達と遊んで来ても良い?』
そんなことを言った日には、『駄目に決まってるでしょっ!!』と物凄い剣幕で怒鳴られた。
未だにその理由は分からない。
誰かを自分の側において置きたかったのだろうか。それとも、自分は子供を愛していると思いたかったのだろうか。
実際には愛など微塵も感じなかった。“歪んだ愛情”ですらない。
彼女が興味があった人は、“孝彦”。ただ彼だけ。
私は息を潜めて、存在を消して生きていた。
とにかくそれは大きくなるに連れて私を苦しめていった。
簡単に言えば軟禁されているような感覚だった。
だけど、皮肉にも軟禁されていることが好転したこともある。
それはそのおかしな状況をおかしいと気付かないでいられたこと。
私にとってその生活が“普通”だったのだ。
それでもやはりいつかは気付く。
そして次第に逃げ出したいと思うようになる。