残酷なこの世界は私に愛を教えた



でも実際には逃げ出せなどしない。



今まで父親がやっていたと思い込んでいたことが私がやっていたと知ったら、母親がどうなってしまうのか考えることすら怖かった。



逃げ場所も無かった。




この地球の裏側、いや、宇宙の果てまで逃げられないなら捕まる。



母親はきっと、何故私が逃げ出したいと思っているのか分からないから。



肉体的な虐待を受けているわけでもなく、母親の自覚も無ければ警察に行っても何か変わるとは思えなかった。




それに……そんなことを考えていると、私自身なぜ逃げたいのか分からなくなるのだ。





そして母親の元に戻った後、どんな仕打ちが待っているのか考えるのはもっと怖かった。




もう手枷足枷をつけられ、一生監禁されるのではないか――そう思うほど私にとって絶対的な恐怖の対象だった。




まあそうハッキリと考えたのは高校生になってからで、それまではその恐怖を知らないフリをして生きていたのだけれど。



でもやっぱり家にいるのは苦痛で、学校が唯一の逃げ場所となっていく。




友人やその親御さんや先生達と話しているのか好きだった。



父親の相手をしていたからだろうか、私は聞き上手になっていて自然と相談役になったり愚痴を聞かされたりした。



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