残酷なこの世界は私に愛を教えた
それでも良かった。誰かと話しているのが好きだったんだ。
それでもいつの間にか彼らの負の部分を吸収してしまっていたのだと、今になって思う。
『私の夫が不倫している……』
『うちの孫は発達障害で……』
『あそこの家の子は発達障害で……』
『勤めている会社がブラック企業で……』
『医療業界には新興宗教に入ってる人が多い……』
『薬剤師は体を壊す……』
小さい頃からそんな話を聞いて育ってきた。
いや、よく考えてみれば暗い話題は無理に聞かされたものが多い。幼心に、聞きたくないと思っていた。
暗い事実と、それを笑いの種にする醜い人達。
真偽も分からない根拠のない噂話。
偏見と差別と見栄の張り合い。
そんなものの前で、“夢”など存在しなかった。
自然と社会に希望を持てなくなっていた。
そんな生活を送り、私は高校生になった。
担任は最悪だった。
昔から遊ぶものも無くて、勉強しかやることが無かった私は自然と成績が良かった。
流石にうちのクラスでトップは取れないが、ある程度――T大を勧められる程度――の成績は取っていた。