残酷なこの世界は私に愛を教えた
正直、大学なんてどこでも良かった。
私は目の前の生活に精一杯だったから。
でも担任にとって、合格実績は自分のキャリアになる。そして、彼が興味があるのはT大のみ。
私を含む、上位5人くらいにT大を勧めて回っていたらしい。
少しでも成績を落とすと呼び出された。
他の人――言い方は悪いが、私よりも成績が良くない人――には何も言わない。
彼は自分のキャリアにしか興味が無かったのだ。
私達の受験は、彼の所有物となってるように感じた。
それまで完全放置の環境だったから、私にとってそれが苦痛になっていった。
私の唯一の逃げ場所だった学校は、逃げ場所では無く苦痛の場となってしまった。
そしてある日、酔った父親が言う。
『お前は俺の子じゃねえ』
何でだろう。それまでもっと酷い経験なんてしてきたのに、その言葉が一番深く私に突き刺さった。
それまで、母親と父親は一度は籍を入れたことがあるのだろうと思っていた。
だけど、調べてみると一度も籍は入って無い。
離婚という形ですら無い。
その時初めて母親の精神がおかしいと気付く。
なら、今までこの人を父親だと思っていたのは嘘を信じていたのだろうか。
私は彼のタバコの吸い殻を集めて、丁度その時費用が安くなっていたDNA鑑定に出した。