残酷なこの世界は私に愛を教えた
一周回って、最早それは興味だった。
彼が父親であるという話は、果たして事実なのかどうか。
彼女は嘘を本当だと思い込んでいるのか。
結果、彼は私の実の父親。
何がなんだか分からなくなっていた。
何が事実なのか分からなくなっていた。
母親は完全におかしくなってしまっていて、父親は自分が父親であることを認めない。
その時、私には両親が完全に理解不能なもの――私には絶対に理解し得ないものに感じられた。
私はきっとこの人達を理解することなんて一生出来ない。
そう思った。
私は一度、父親とは籍が入っていないと母親に言ったことがある。
その時の母親の様子は、今でも思い出したくない。
『嘘は言わないで! 私を怒らせたいの!? あんたは大人しくしてれば良いのよ!!』
他にも何か言っていた気がするが、もう良く覚えていない。
『でも……』
『うるさいって言ってんの!!』
その時、初めて母親が私に包丁を向けた。
それまでも彼女が包丁を取り出すのは見たことがあった。でもそれは祖父母に対してであって、対象は私では無かった。