残酷なこの世界は私に愛を教えた
その日は学校を休むことになった。
「ゆっくり寝な」
家に帰ると、隼人が腕枕をしてくれる。
安心と、疲れと、眠気とでポロッと口から想いが漏れる。
「大好き」
「ん? どうした急に?」
フッ、と笑みを含むその声を聞き終わる前に私は眠りに落ちていった。
◇◇◇
その日の内に、りーさんは家に戻ってきた。
カフェの自宅には戻らず、須貝家の方に。
りーさんは思ったよりも明るかった。が、それが空元気なのは誰の目にも明らかだった。
「ほら、しんみりしないでよ! 私は大丈夫なんだから!」
そんなことを言われましてもね、りーさん。
彼女の顔のあざが痛々しい。
足も痛めているらしく歩き方もぎこちない。
「りーさん、こっち来てください」
「はーい」
まるで幼稚園のような調子で言い、ついてくる。
「足、出してください。湿布、替えましょ?」
りーさんの綺麗な白い足には鮮やかなほどの内出血の跡。
胸が痛んだ。
やはり父親を許せないし、自分を悔やまずにはいられない。
あの時、早くHappinessに行っていれば。
――父親の行動をもっと見張っていれば。
結果論でしかないが、そんな思いを捨てることは出来ない。
実際、私が父親を見張っていることなんて出来なかっただろうが。
その時だった。
りーさんが、初めて暗いトーンで言葉を発した。