残酷なこの世界は私に愛を教えた
「彼、昔何かあったのかも知れませんね。あそこまで子供に反応するなんて、何かトラウマ的なものがあるのかも」
「でも、それは愛珠ちゃんを傷付けて良い理由にはならないわ」
それまで静かだった彼女の強い口調に驚く。
「仮に孝彦さんに何かトラウマがあったとしても、それを理由に自分の子供をないがしろにして良い訳じゃない」
それは。
「それはりーさんに対しても同じですよ」
「えっ?」
「あの人に何かあったとしても、それがりーさんを傷付ける理由にはならないです。……りーさん、もっと自分に優しくしてください」
それは本心だった。
りーさんはあまりにも他人に優しすぎて自分を後回しにしてしまう。
「ええ? してるわよ、ちゃんと」
「りーさんは優しすぎるんですよ! 必ずりーさんに釣り合う素敵な人が現れますから、だから……」
「……うん、ありがとう。でも、あなたもよ? 私は愛珠ちゃんが心配だわ」
「えっ」
「あなたは……全部一人で抱え込んでしまうでしょう? もっと他の人に――私とか、それこそ隼人に言いなさい。もし隼人が頼りにならなかったら私に言いなさい? 私が張っ倒してやるわ」
「えっ、あははっ。相変わらずですね」
結局りーさんはりーさんらしく、強かった。
でも空元気だった笑顔とは違って、私に向けた力強い笑顔はまぶしいほどだった。