残酷なこの世界は私に愛を教えた




「彼、昔何かあったのかも知れませんね。あそこまで子供に反応するなんて、何かトラウマ的なものがあるのかも」



「でも、それは愛珠ちゃんを傷付けて良い理由にはならないわ」





それまで静かだった彼女の強い口調に驚く。




「仮に孝彦さんに何かトラウマがあったとしても、それを理由に自分の子供をないがしろにして良い訳じゃない」




それは。




「それはりーさんに対しても同じですよ」



「えっ?」



「あの人に何かあったとしても、それがりーさんを傷付ける理由にはならないです。……りーさん、もっと自分に優しくしてください」




それは本心だった。


りーさんはあまりにも他人に優しすぎて自分を後回しにしてしまう。




「ええ? してるわよ、ちゃんと」




「りーさんは優しすぎるんですよ! 必ずりーさんに釣り合う素敵な人が現れますから、だから……」




「……うん、ありがとう。でも、あなたもよ? 私は愛珠ちゃんが心配だわ」




「えっ」




「あなたは……全部一人で抱え込んでしまうでしょう? もっと他の人に――私とか、それこそ隼人に言いなさい。もし隼人が頼りにならなかったら私に言いなさい? 私が張っ倒してやるわ」




「えっ、あははっ。相変わらずですね」





結局りーさんはりーさんらしく、強かった。



でも空元気だった笑顔とは違って、私に向けた力強い笑顔はまぶしいほどだった。








< 186 / 197 >

この作品をシェア

pagetop