残酷なこの世界は私に愛を教えた



そう、今日みたいに。




「何がいい? 夜ご飯」




「んー……カレー食いてえなあ」




「またー? カレー好きだねえ、隼人」




「愛珠の料理は何でも上手いから好き」





そう言って彼が私にキスをすると、リップ音が部屋に響く。



ご両親は仕事柄家を空けることが多く、りーさんも自宅と行き来という形なので隼人は一人になることが多い。



寂しくはないのだろうか。



そう思って聞いたら、『愛珠がいるから大丈夫』なんて返ってきた。








ご飯が終わって、珍しくソファーに座りテレビを見始める隼人。



隼人は受験が近くなってきてほとんどの時間を勉強に費やしているから、今日みたいなのは珍しい。



私も隣に座る。





『さて、あなたの生き甲斐は何ですか!?』



たまたまテレビをつけたタイミングでそんなナレーションが聞こえる。




「お、だってよ愛珠。お前の生き甲斐って何?」




さらっと隼人が聞く。




生き甲斐?







“お前は何の為に生まれて来たんだよ”







母親の声が聞こえた気がした。




「それは……」



「ん? 何、あんの?」



「いや、何でもない」





生きる意味とか、生まれてきた意味とか、そんなものは後付けのものだ。




そんなもの、無かった。――昔は。




じゃあ、今は――?



私の生きる意味は、もうとっくに隼人になっている。




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