残酷なこの世界は私に愛を教えた
あ、そうそう。
りーさんはお腹の子を産むことにしたって。
なんだけど、やっぱりシングルマザーにするのは心配ってりーさんのお母さんは言っていた。
勿論、りーさんの体を考えれば産む方が良いのだが。
今日は珍しくお義母さんもお義父さんもりーさんも全員集まれる日。
こういう日はめったに無いからみんなで過ごすんだけど……。
「あー……芽里、そちらの方は?」
現れたりーさんの隣には、若い――と言ってもりーさんと同じくらいかそれより少し若いくらいだが――爽やかな男性が立っていた。
お義母さんが堪えきれずに聞く。
「あ、えっと長池敦(ながいけ あつし)さん」
「初めまして! 突然ですが、娘さんを僕に下さい!!」
ガバッと彼は頭を下げる。
こんな定型文使う人居たんだ……。
てか! 結婚!?
麻友子達といいりーさんといい、みんな急だな!
「……本気なのか」
普段は温厚なお義父さんも声が低くなる。
それもそう、あの日からまだ2ヶ月くらいだ。
「うん」
りーさんの声は強かった。
「あ、もしかして……」
隣で隼人が何かに気付いたように声を上げる。
「Happinessの……」
「ああ!」
どこかで見たことがあると思ったら、そうだ!
この人、Happinessで働いてる人だ。何回か見たことがある。