残酷なこの世界は私に愛を教えた
それからしばらくして、お義父さんと長池さんが帰ってきた。
思ったよりも長かった。
「幸せになれよ、芽里」
短い言葉だったが、とても愛に溢れていた。
二人は何を話したのだろう。
この時間でお義父さんを納得させるほどの人だ。きっと良い人なんだろう。
だけど。だけどやっぱり心配だ。
“ダメ男ホイホイなんだよなー”
隼人の声がよみがえる。
もう、父親のような人に捕まってほしくない。
「命かけて芽里を幸せにします! よろしくお願いします!!」
突然彼が言う。
「ちょっと、敦……」
――パチパチパチ
お義母さんが拍手する。
「信じてるわよ」
「はい!」
その一言が全てを含んでいた。
その日は、長池さんを含めた6人での夕ご飯となった。
「あっ隼人ー、お皿1つ出してくれない?」
「はいよ」
「うわあ、すごい……料理上手なんだねえ、まだ高校生なのに」
長池さんがフライパンを覗き込んで言う。
「でしょー、愛珠ちゃんのご飯美味しいのよ~」
――バシッ
「うっ」
お義母さんが長池さんの肩を叩き、彼は肩を押さえている。