残酷なこの世界は私に愛を教えた
「あの」
立ち去ろうとする背中に呼び掛ける。
「何で俺の所に連絡が来たんすか?」
「……それは、私は分からないわ。あなたに連絡したのは私ではないから」
「そうすか。……ありがとうございました」
どういうことだろう? なんで高瀬さんは親に連絡しなかったのか。
でもその疑問は考えても解決はされなくて、俺は考えるのを諦めて308号室に戻った。
高瀬さんのベッドの横に、パイプ椅子を持ってきて座る。
もう夜9時を回った。
さっき学校の番号を伝えたから、学校から高瀬さんの家に連絡がいくだろう。
事故にあった後とは思えないくらい穏やかな寝顔を見ていると、俺も眠くなってきて椅子に座ったまま意識を手放した。