残酷なこの世界は私に愛を教えた

安心と無気力




◇◇◇



あの日――俺と高瀬さんが出会って、高瀬さんが事故にあった日――から3日。放課後に毎日高瀬さんを見舞いに行ってる。



彼女は“毎日大変じゃない? 毎日来なくても大丈夫だよ”なんて言ってくれたけど、特に放課後にやることもないし――いや、ほんとは勉強しなくちゃなんだけど――毎日来てる。



――ガラガラ



308号室のドアを開けると、そこには高瀬さんの姿はなかった。



どこに行ったのだろうか。



でもこんな所に動けず一人で寝ているのも暇なんだろう。きっと少し出歩いているだけだろう、と病室を出て少し歩いてみる。



階の端の広場にあるソファーに座っている高瀬さんを見つけた。



「よっ」



そう声をかけると、少し驚いたように振り替える。



“今日も来てくれたんだね”



「毎日来るって宣言したじゃん」



“いいって言ってるのに”



ほんとに優しい子だなあ。



毎日来てても、別に大したことは何もしてない。


好きな芸能人の話とか、学校での話とか。どうでもいいような話をして、帰る。



それをして高瀬さんに何の得があるのかって言われたら困っちゃうんだけど、でもやっぱり一人でいるより誰かと馬鹿話してる方が楽しいんじゃないかな。



ただ今日はあんまり話すことも無くて。何と言うか、落ち着いたトーンの会話が繰り広げられていた。




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