残酷なこの世界は私に愛を教えた




病棟の廊下を歩いていると、さっきの看護師さんが目に入った。



「あら、あしゅちゃんの彼氏さんじゃない」



「はっ? いやいや、違います!」



唐突にそう言われて慌てて否定する。


……そんなにカップルっぽく見えるのか? あーでも今日の高瀬さんが寝てた時は確かにそう見えても仕方ないか。



「あら、違うの? あしゅちゃんがあんなに気を許してるからてっきり……」



看護師さんは早とちりしてごめんなさいね、と笑う。



「あの、気を許してるって……?」



言い方が気になって尋ねた。



「…………実はね、あの子寝ないのよ」



「寝ない……?」



言葉の意味が理解できなくて聞き返す。



「いつも起きてるの。夜、一時くらいにたまたま通ったのね。……何もしてないんだけど、目開いて、起きてるのよ。他の看護師が三時くらいに見たこともあったんだけど、やっぱり起きてたらしくてね」




それって文面だけ見たら、ホラーだろ……。




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