残酷なこの世界は私に愛を教えた
「不眠症、なのかしらね。でも、本人は自覚が無いらしくて。だから、今日あなたに寄りかかって寝てるのを見て、少し安心したっていうか……」
「なるほど、そう言うことですか」
「なんていうか、あんまり私たちに心を開いてくれないのよね。筆談だから話しにくいってのはあるんでしょうけど。あなたとはあんなに楽しそうに話すのねえ。なんだか妬けるわ」
「何言ってんすか」
あはは、と看護師さんが笑う。
俺は病院を後にした。
高瀬さんは少なくとも俺と居るときは普通の女の子だ。
とても明るく笑うし、筆談でする会話もよく弾む。
きっとまだ看護師さん達になれていないのだ。
次第に明るくなるだろう。
そして、眠れない高瀬さんが眠れるようになるなら、いつでも肩を貸そうと思った。