残酷なこの世界は私に愛を教えた




「不眠症、なのかしらね。でも、本人は自覚が無いらしくて。だから、今日あなたに寄りかかって寝てるのを見て、少し安心したっていうか……」



「なるほど、そう言うことですか」



「なんていうか、あんまり私たちに心を開いてくれないのよね。筆談だから話しにくいってのはあるんでしょうけど。あなたとはあんなに楽しそうに話すのねえ。なんだか妬けるわ」



「何言ってんすか」



あはは、と看護師さんが笑う。

俺は病院を後にした。



高瀬さんは少なくとも俺と居るときは普通の女の子だ。
とても明るく笑うし、筆談でする会話もよく弾む。

きっとまだ看護師さん達になれていないのだ。

次第に明るくなるだろう。


そして、眠れない高瀬さんが眠れるようになるなら、いつでも肩を貸そうと思った。




< 27 / 197 >

この作品をシェア

pagetop