残酷なこの世界は私に愛を教えた
!?
一段低い所へ体を連れ戻され、顔を確認する間もなく、誰かの体温に包まれる。
「死なないで」
少しだけ慌てたような声で囁かれる。
そもそもこんな状態初めてで、体が硬直してるのに、耳もとで囁かれたりなんかしたらもう…思考が止まる。
「頼むから…」
悲痛な声が何故か私の感情を揺さぶった。
え、何? 死…?
もしかして私、自殺しようとしてると思われた?
辛うじて脳が再び機能し始める。
「っ……」
“自殺しようとなんてしてないよ”
言いたいのに、言えない。
せめてと思い、体を離して顔を横に振る。
だけど、相手の顔を見て固まる。
え、誰ですか、このとんでもない美形は。
……私今この人に抱き締められてた!?
「え、自殺……しようとしてたんじゃないの?」
え、違う違う!
また顔を横に振ると半信半疑な表情を浮かべるイケメン君。
「それなら良かった、けど。お前今、そこから身乗り出してたぞ……?」
え。嘘、乗り出してた?
「分かって無かったのかよ!?」
頷く私を見て、ため息をつく。
「危なっかし過ぎ。しっかりしろよ?」
それがこの男子生徒との出会いだった。