残酷なこの世界は私に愛を教えた
「こいつは中田智久(なかたともひさ)。ただのクラスメイトな」
先輩が、渋々といった感じでその人を紹介する。
「やだ、冷たい隼人。こんなに仲良いのに」
「良くねえ」
「もー、幼稚園からの仲でしょー?」
「腐れ縁だ」
何だか、新鮮だ。先輩が普通の高校生に見える。
いや、もちろん普段も高校生なんだけど。
何て言うか、凄い美形だし、凄い気が利くし、凄い優しいし……。
リアル王子様みたいな?
そんな感じがしてたから、こんな風に友達と話しているのを見ると改めて“ああ、この人も高校生だった”って思う。
隼人先輩は真顔だけど、私には二人がじゃれてるようにしか見えない。
思わずクスッと笑ってしまう。
「で、いつも何してんの? ここで」
中田先輩がそう言いながらパイプ椅子を取り出し腰かける。
「何居座ろうとしてんの?」
「え? わざわざここまで来たのにすぐ帰らせるつもり?」
「それはお前が勝手に来ただけだろ」
「ほんとに冷たいー。ねえー、良いよね? 高瀬さん」
私が頷くと、ようやく隼人先輩もベッドの横の椅子に腰かけた。