残酷なこの世界は私に愛を教えた




――ガチャン



どんなにゆっくり閉めても鳴くドアを黙らせると、そこには先輩が座っていた。


下を向いて寝ているようだ。


閉まるドアの音で起きたらしく、目を擦っている。



「お、こっちおいで」



そう言いながら自分の横をポンポンと叩き、ここにおいでというジェスチャーをする。



“で、どうしたの?”



「おー、今日さパン持ってきてんの忘れてて余計に買っちゃったんだよね。ほら」



先輩はそう言って焼きそばパンとメロンパンを両手に持って私に見せる。


そんな可愛い間違いすることあります?



「どっちかあげる。どっちがいい?」



“先輩が要らない方で大丈夫”



「んー、じゃあこっちあげる」



そう言って先輩はメロンパンを差し出した。





私がパンを食べ終わり、教室に戻ろう立ち上がると先輩が制服を掴んで唐突に聞く。



「いつも誰とお昼食べてんの?」



“うちのクラスはみんな大体ぼっち飯だよ”



「じゃあさ、明日から毎日ここにおいでよ。やだ?」



“分かった”



特に断る理由も無かったし、先輩との時間は心地よかったのでそう答えた。





< 34 / 197 >

この作品をシェア

pagetop