残酷なこの世界は私に愛を教えた
◇◇◇
“お姉さん。ちょっとお聞きしたいことがあるのですが”
「あら、愛珠ちゃんじゃない。ちょっと待っててね。これ出してくるから」
そう言ってお姉さんはフライパンの上のフレンチトーストを指差した。
私はお姉さんのカフェ“Happiness”に来ていた。
お姉さんから隼人の様子がおかしい原因を聞きたかった。
「はーいお待たせー。で、何々? 聞きたいことって」
“隼人が、あの日からおかしいんです。隼人に何があったのか教えてくれませんか?”
文字は用意しておいたけれど、聞くのを迷って間が出来た。
「あの日って、前に二人でここに来た時のことよね?」
はい、と頷く。
「実はね、多分私も全部は知らないのよ。あの子、誰にも話して無いんだと思う」
“そうなんですか……”
――だからね、頑張って本人から聞いてみて――
そうは言われたものの、隼人は話してくれなそうなんですけど。
あの日からもう、3日。
少しは隼人も元に戻ってきていると思う。
でもやっぱり何かが違う。
正直、私なんかが踏み込んでいいのか分からない。
迷惑だと思われたらどうしよう。
だって学年も性別も違うし、出会ってからまだ2ヶ月も経ってない。
人とつるんでる所はあまり見ないけれど、隼人は人気者で、私が踏み込みすぎてしまうのは身の程知らずなんじゃないかな……?
でもやっぱり心配だし……。
そんな思いが頭をぐるぐるとループしている。