残酷なこの世界は私に愛を教えた
旅行
◇◇◇
あれから3週間。
帰りは中田先輩が来るようになって、一度も隼人と顔を合わせないまま夏休みに入って1週間経つ。
――うるせえなっ。お前には関係ないことって言ってるだろ――
あの声が響く。自分の感情を押し殺すような声。
隼人が心配だけど、これ以上は何も出来なかった。
――カチカチカチカチ
あ。シャーペンの芯無いや……。
ノートも無かったし、買い物でも行こうかな。
丁度、駅前を通り過ぎる時。
「愛珠っ!!」
後ろから、聞き覚えのある声がした。
驚いて振り替えると、そこには隼人の姿があった。
小走りで近付いてくる。
「この前はごめん」
私の前に来ると深く深く頭を下げる。
なんで隼人が謝るの。私が悪いのに。
そう思って隼人の顔をあげさせる。
隼人は少ししてからゆっくりと口を開いた。
「明日……一緒に来てほしい」
え? 何?
あまりに突然言われ、何のことか分からず固まる。
「多分泊まりになると思う。頼む……」
苦しそうな声が私の胸を締め付ける。
何でそんなに苦しそうなの?
何で私なの?
幸い、明日明後日は予定は無かった。