残酷なこの世界は私に愛を教えた
人を殺したってどういうこと……?
頭が追い付かない。
隼人が黙っている時間が、何時間にも感じられた。
「……そこのマンションに、昔山中壮介って男の子が住んでた」
ヤマナカソウスケ……。
何でだろう、聞き覚えがある。
小さく、低く話し始める。
─────
俺は昔そこのマンションに住んでた。小さいときから、駆け回れる屋上が大好きでよく入り込んでたんだよ。
小学……5年生位かな? いつもみたいにさ、屋上に行くと一人の男の子がいた。一瞬で分かったよ、自殺しようとしてるんだって。
俺はすぐに止めたよ。その時はそれが正しいことだって信じて疑わなかったからね。
『お前っ!! 何してんだよ! はやくこっちこい!!』
話聞くと3歳下の小学2年の山中壮介だった。
これが俺たちの出会いってわけ。
『絶対死んじゃ駄目だ』
『どうして?』
『どうしてってお前……生きてた方が楽しいだろ?』
『そうなの?』
『そうだよ。よし、約束な。俺がお前に生きてて良かったって思わせてやるからな!』
『約束?』
『おう、約束!』
それから俺達はいつも一緒に居るようになった。
ていうか、一緒に居て見張ってないとあいつがふらっと死んじゃいそうで怖かったんだよ。
そんな感じで最初は“一緒に遊ぶ”っていうよりかは“見張ってる”って感じだったんだけど……いつの間にか一番の親友になってたんだよな。
『壮介ー! 早く来いよー! ほら、クワガタいるぞ!!』
『えっ!? どこどこ!? あーっ、ちょっと待ってよー! もう、先行かないで!』
壮介と遊んでる時間が一番楽しくて、いつもいつも二人で遊んでた。
……俺は、壮介も同じ気持ちで居てくれてるだろうって、きっと生きるのが楽しいって思ってるだろうって、信じて疑わなかったよ。
あの日までは。