残酷なこの世界は私に愛を教えた




階段を降りながら、先輩の肩を眺める。


これだけ美形なんだから、誰か騒いでる子がいても可笑しくないと思うんだけどなあ。いや、もう騒がれてたかな?



『〇〇先輩知ってる?』

『知ってる知ってる~! あの超イケメンな人でしょ?』



そんな会話は色んな所から聞こえて来るけれど、何と言ってもうちは私立。
学年約400人いる。


学力別に校舎も別れてるから会わない人もいっぱい居て、そんな会話ほとんどついていけてない。


今までごく普通な人生を送ってきた。
少し言うならば、彼氏が居たことはない。特に仲の良い男子も居なかった。



つまり、こういうことに慣れてないんです。


一階に着き、あれ、と驚く。
二つに別れている校舎のうち、私の教室が無い方に来ていたらしい。



「そー言えば、何組?」



軽く振り向きながら先輩が聞く。

私は1という数字を作って見せる。



「えっ、まじで? 1組? すごいね、頭良いんだあ」



うちの学校は学力が高い順にクラス分けされる。1組が最も学力が高く、10組に近づくに連れ下がっていく。

毎年クラス編成は変わるのだが、1組だけはほぼ入試で決まったメンバーに入れ替わりは起こらない。



「俺は6組だからさあ、もう雲の上だな、1組は」



そう言ってにかっと笑う。


もはやここで『いえいえ、そんなこと』と首を振るのはデフォルトになっている。

とは言え、うちは一応進学校ということになっている。
10組でも偏差値は55ある。




< 5 / 197 >

この作品をシェア

pagetop