残酷なこの世界は私に愛を教えた
「あれから、何が正しいことなのか分からなくて。“価値観を押し付けんな”って言葉がずっと頭の中を回ってる。……それまで、生きるように言うことが正しいことだって信じて疑わなかったから、それが一番壮介を苦しめてたなんて……」
愛珠の腕に少しだけ力が入った気がした。
「情けないって思うかも知れないけど、それから何も言えなくなった。俺の一言が、その人を傷付けてたらどうしようって思って。……情けないよな」
俺は愛珠の肩に頭を預けた。
愛珠の手が優しく俺の背中を撫でる。
「一緒にここに来てくれて、ありがとう」
それから朝まで、俺は愛珠の腕の中で眠った。