残酷なこの世界は私に愛を教えた
山中家
《side愛珠》
んー。朝かぁー。って、あれ? なんか私の腕の中にイケメンが居るんですけど!?
あっ、そうだった。夜中に隼人がうなされてて……。
にしても若い男女が同じ布団で寝るのってどうなの……?
いやいや、そんな邪な関係じゃないし! てか隼人がこんな時にそんなこと考えちゃ駄目でしょ!
でもそれを忘れさせるくらいイケメンなのが悪いと思う……。
そんなどーでも良いことに思いを巡らせていると、腕の中の隼人が声を上げた。
「んー……あ、おはよぉ……」
そう言ってまた布団に顔を埋める隼人。
朝弱いんだ。
可愛い。
隼人の顔を見つめる。
昨日の隼人の言葉が忘れられない。
『ひとごろし』
子供は無邪気で、残酷だ。
きっと、その言葉の意味さえも分かっていなかったのだろう。周りの大人達の話す言葉の音だけを覚えていたのだろう。
その言葉を言われたとき、隼人はどれ程辛かっただろうか。
“壮介”は隼人の一番の友人でもあった。ただでさえ壮介君の亡くなるところを目の当たりにして、小学六年生には相当応えただろうに。
……親友が自分のせいで死んだと言われて、酷くショックを受けたのだろう。まだ幼い、小学生だ。でも、言葉の意味を理解するには十分だった、六年生。
大きすぎる現実を、まだ小さな背中に背負わされてしまった。
『――私も全部は知らないのよ』
肉親にも明かさず、たった1人で。
『……俺は、あいつを……殺した……』
ここに来てから、一度も涙を見せていない。
きっと隼人のことだから壮介君の死に責任を感じて泣いてはいけないと思っているのだろう。
――やっぱり、臆病者の私は隼人の側に居ることしか出来そうも無かった。