残酷なこの世界は私に愛を教えた




お願い、声、出て――!



初めて声が出なくなってから、出したいと自ら強く思った。



「っ……」



「どうした、愛珠? 大丈夫か?」



お願い、出て!



「……ニア」



「え? 愛珠、声……」



始めはかすれた声だった。
隼人が驚いて私を見つめる。



「……チュニア。隼人、それペチュニア!」



「え? ペ、ペチュニア……?」



「うん。貸して」



その小さなカードを手に取る。



「愛珠? 何して……」



あった!



カードの右下に、小さなズレがある。

そこから上の紙を剥がすとカードが開いた。



「な、に……」



隼人が驚いた声を出す。



そこにはこう書かれていた。




――机のキャビネットの二段目に入ってます。

僕が死んでから読んでね――




「キャビネットの二段目……?」



「お母さん、壮ちゃんの机ってそのままになってますか?」



「え? ……ええ。そのままよ」



「行こう、隼人」



「う、うん……?」



戸惑っている隼人やお母さんをよそに、私は立ち上がった。




お母さんの案内で壮ちゃんの部屋に入る。


キャビネットの二段目……っと。


何が入ってるかは私も知らない。



――ガチャ



「ん? これは……ノート……?」



出てきたのは、一冊のノート。

鮮やかな青色の小さな花の写真が表紙だった。



「俺が読んで、いいんすよね……?」



「ええ」



隼人は恐る恐るノートを開いた。



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