残酷なこの世界は私に愛を教えた
最後の、『幸せだった』という文字が滲んでいた。
涙のあとが残っていた。
「……」
皆が、涙していた。
あまりに大人びたメッセージが病気の壮絶さを連想させた。
若い時の苦労は、――時に成長を早めてしまう。
私は、あの小さなカードを手にして重い沈黙を静かに破る。
「ペチュニアの花言葉は、“あなたと一緒なら心が和らぐ”。それから、このノートの表紙の写真の花……これは、ワスレナグサ。花言葉は、……“私を忘れないで”」
あの日、病院で作っていたのは、これだったんだ。
「壮ちゃんが、教えてくれたの」
「……そう、すけ……」
隼人の目にも涙が溢れた。
私は彼の肩を抱いた。
隼人が初めて見せた涙だった。