残酷なこの世界は私に愛を教えた
もう30代後半、40歳に近いように見える壮ちゃんのお父さんを見つめる。
……確かに、似てないこともない。
中田先輩と同じくらい美形だし、あとは……鼻の形と眉毛がちょっと似てる……かな?
混乱する私を見て中田先輩は苦笑する。
「あはは、ごめんごめん。俺たち異母兄弟なんだよ」
「あっ……」
「ああ、なんかそういう感じじゃないよ? 兄貴の母親は体が弱くて兄貴産んだ時に死んじまったんだって。それで、兄貴が手が掛からなくなった頃に俺の母親に出会って再婚したんだってさ。それで俺が生れたって訳」
「そうなんですね」
その派手な風貌は家族との確執からではないのかという、私の頭に一瞬で浮かんだ仮説が否定されて思わずホッとする。
「うん。だから兄貴とは仲良いから安心して。俺からしたら親父が二人居るようなもんなんだよ」
「誰がくそ親父だって?」
ぬっと先輩の後ろに顔を出したのはさっきまで向こうで壮ちゃんのお母さんと話してた彼。
「うわっ。誰も“くそ”なんてつけてねーだろ!」
みんなの笑い声が青空の下に響いた。