残酷なこの世界は私に愛を教えた
少しの沈黙の後、私からそれを破った。
「……壮ちゃんが逝ったこと、知らなかった……」
「仲、良かったんじゃないのか?」
「私が引っ越しちゃったからかな。私が退院するタイミングで今の家に越しちゃったから、全然知らなかった」
隼人は、なるほど、と頷く。
「壮ちゃんの病気重いのは知ってたからもう会えないかも知れないとは薄々思ってたけど……まさか、あんなに生きるのが楽しそうだった壮ちゃんが……自殺、なんて……」
壮ちゃんの口癖は、『楽しいな、生きてて良かった』だった。
もう隼人と出会った後だったのだろう。
「……」
“もっと病気が進行したら、この気持ちも無くなってしまいそうでこわいから”
“なのに最近、すごく体が痛いとき死にたいと思っちゃうんだ”
“そんな自分もこわい”
“自分を失っていくみたいで、こわい”
壮ちゃんの痛切な思いを綴った言葉を思い出す。
「苦しかっただろうね」
隼人は顔を手で覆い、苦しそうな表情を見せた。
「……俺、壮介が病気だったこと、癌だったこと知らなかったんだよ。今日、知って……」
「……うん」
私は隼人がゆっくりと言葉を紡ぐのを待つ。