残酷なこの世界は私に愛を教えた
カウンターの上には、ビールの空き缶が5、6個。
恐らくお姉さん一人で飲んだのだろう。
「おい、ねーちゃん? どうした?」
隼人が肩を揺すっても、「んー……」と声を上げるだけで起きる様子は無い。
「おいっ、ねーちゃん!」
「んっ!? な、何……? ……あぁ、なんだ隼人か」
「なんだじゃないだろ。どうしたんだよ、こんなに酔って」
「酔ってなんか無いわよ、ほらちゃんと立てるし……きゃっ」
足がふらつき、倒れてしまうお姉さんを隼人が抱き抱える。
「しっかりしろよ」
「してるわよ……。あっ、そうだこれ。あなたたちにあげる」
お姉さんの手にあったのは、有名なテーマパークのペアチケット。
「え、そんな、貰えませ……」
「ああっ、あんのくそ男ー!! もう、ほんとにあり得ない! 愛珠ちゃん、男には気を付けなきゃ駄目よっ」
「は、はい……?」
急にお姉さんが大声を出す。
「楽しんで来なさいよー?」
「分かった分かった、これは俺らが貰うからねーちゃんは上で休んどけ、なっ?」
隼人がお姉さんの自宅となっている二階にお姉さんを運んで行った。