残酷なこの世界は私に愛を教えた
「ゆっくりでいいよ。大丈夫だから、一緒に選ぼ。な?」
「……うん」
再び店に戻り、ゆっくりとグッズを見て回る。
「愛珠は何が好きなの?」
「んー……」
すぐには出てこない答えを、隼人は黙って待っていてくれる。
「あっ、ネックレス……とか」
「おお、ネックレスいいじゃん。ほら、こっち。どれが良い?」
隼人に包まれている右手が温かい。
「隼人。手……」
「駄目?」
「ううん。繋いでて」
「分かった」
誰かの隣が温かくて泣きそうになるなんて、私じゃないみたい。
……隼人、だから?
「じゃあ愛珠、こうしよ。この3つの中で、どれが一番好き?」
テーマパークのロゴが施されたものと、三日月に猫が座っているものと、誕生石が埋め込まれたもの。
「……えっ、と」
「ゆっくりで良いから。待ってるからよく選んで」
「……誕生石」
何となくそう思った。
「お、思ったより早い。ほんとにこれで良いんだな?」
「もー、あんまり聞かないでよ。そうやって言われると分かんなくなるから」
「そっか」
笑って、隼人は1月のガーネットを手に取る。
「愛珠は?」
「これ」
11月のトパーズを手に取る。
「貸して」
「え、いいよ。自分で払う」
「良いから。俺からのプレゼント」
私の手からネックレスを取り、レジへと歩いていく。
「でもっ、それ結構するし……」
「俺はこれ以上のものを愛珠から貰ったから。勿論、お金ではかることは出来ないけど」
あの旅行のことだろうか。
「今日くらい、格好つけさせて?」