残酷なこの世界は私に愛を教えた
「じゃあ、次は愛珠が乗りたいのにしようか」
「……うん」
「大丈夫。まずは歩こ?」
彼は私の手を引いて歩き出した。
よく見れば色々なキャラクターが歩いていたり、屋台があったり、何だか違う場所に来たみたいだった。
「あっ、これ……」
「乗りたいの?」
大きな観覧車。
「うん。これがいい」
「お、おう。……じゃ、そうしよっか」
少し返事に間があった気がした。
他のアトラクションよりも気持ち短めの列の最後尾に並ぶ。
「前にね、おじいちゃんとおばあちゃんと遊園地に行ったことがあるの」
小学校低学年くらいの時だっただろうか。
「うん」
「そこで観覧車に乗りたいって言ったんだけど『もう年だから高い所は嫌だ』って言われて観覧車に一人でしか乗ったこと無いんだよね」
一人の空間は、想像よりずっと味気無かったのを覚えている。
「なるほどねえ。俺で良いの? 一緒に乗る人」
少し笑って、隼人が聞く。
「うん。隼人がいい」
「やめてよ照れるじゃーん」
「あははっ」
程なくして、順番が来る。
「では、お楽しみ下さーい!」
可愛いお姉さんが手を振る姿がゆっくり遠ざかっていく。
私と隼人は、向かい側に座った。