残酷なこの世界は私に愛を教えた
◇◇◇
ようやく夏休み明け初めての屋上に行ける。
昼休みになって教室を出ると。
――ドンッ
「キャアア!」
高い悲鳴とぶつかり、私と相手は二人とも廊下に打ち付けられた。
どうやら二人とも慌てていたらしい。
彼女が持っていた資料が辺りに散乱していた。
「ごめんなさい!」
急いで立ち上り謝る。
「ううん、こちらこそごめんなさい……って、愛珠!? え、この高校だったの!?」
突然名前を呼び捨てされて驚いて顔を上げる。
そこに居たのは……美少女。
いや、とんでもない美少女。
こんな美人知り合いに居たっけ……?
私がポカンとしていると彼女は少し眉尻を下げて笑った。
「あれ、忘れちゃった? 中学一緒だったじゃん。2年で転校しちゃったけど」
「……え、もしかして」
「そ、麻由子だよ! 石橋麻由子」
「うわあ! ほんとに? 久しぶり!」
久々の再会に、私達は少し言葉を交わした。
同じ高校だったが校舎が違うためなかなか会わなかったこと、中学の思い出話。
「あれ、愛珠どっかに行こうとしてたんじゃない?」
「あ、2号舎の屋上に」
2号舎というのは隼人の方の校舎だ。
「え、屋上? あそこ入れるの?」
「あー、うん。実は」
「え、何々、そこで誰かと待ち合わせでもしてる訳?」
麻由子は相変わらず勘がいい。
「あの……須貝隼人っていう三年生」
「ええっ!? 須貝先輩!? 何で? もしかして彼氏?」
「あ、ううん。違うんだけど」
隼人はやはり美形で有名らしく、そんな彼が校舎の違う私と何故接点があるのか麻由子は聞きたがった。
隼人との出会いを軽く説明して、私達は別れた。