残酷なこの世界は私に愛を教えた
ドアを開けたことに気付いた二人がこちらを見る。
後にも先にも引けなくなって、私は屋上に足を踏み入れた。
「麻由子……」
なんて言うのが正解なのか分からなくて言葉に詰まった。
「あ、愛珠! お邪魔してまーす」
麻由子の頬を伝ったであろう涙はもう乾いていて、その明るい声に泣いているように見えたのは気のせいだったのだろうかと思ってしまう。
だけど彼女の目が赤いことに気付き、また言葉を失った。
「どした……? 大丈夫?」
麻由子は私から隠れるように隼人の後ろへ半歩下がる。
「え? 何のこと?」
「ううん、何でもない。……どーする? お昼。麻由子も一緒に食べる?」
私も麻由子が言いたくないことを無理に言わせるほど無神経じゃない。
その日は初めての三人でのお昼となった。
「へー、石橋さんと愛珠は同じ中学だったんだ?」
「そうなんですよ。結構仲良かったんですよー? 二年の時は同じクラスだったし。なのに高校来たら忘れてたんですよ、この子! 酷いと思いません!?」
あり得ないっ! と私をキッと睨む麻由子。
「え!? いやいや、麻由子結構変わったから分かんなくて……ごめんって~」
じとーっとした目を向け続ける麻由子に降参して謝る。
隼人はというとこんな私達を見てクスクスと笑っている。