残酷なこの世界は私に愛を教えた



「あ、二人っていつもここで食べてるんですか?」



麻由子が隼人に話題を振る。



「おー、そーだな」



「え、いっつもパンですか?」



「おう。購買ってパンしかねーだろ?」



「確かに……って、もしかして愛珠も!? 体に良くないよ! 明日お弁当作ってきてあげるから!」



ガバッと私の肩を掴みまくし立てる。



「え? 作って……? すごいねえ……」



一体何時起きになるんだろうとか、三人分作るのどれくらいかかるんだろうとか、考えるのも恐ろしい。



「食べられないものとかある?」



あんまり急だったから勢いに負けて「いや、特には……」と言うと、「楽しみにしてて!」と麻由子は可愛い顔で笑った。





◇◇◇



「うわー、すげーな」



「豪華すぎる……」



目の前に広げられた弁当に思わず唾を飲む。

麻由子は早速次の日から弁当を作ってきてくれた。



「あ、トマトは入れてませんよっ」



突然麻由子がいたずらっ子のように隼人の顔を覗き込む。



「あやしー……」



隼人はと言うと麻由子にムーっと疑いの目を向けている。



「え、何でですか!」



「わざわざ言う辺り怪し過ぎる。言っとくけど俺すぐ気付くからね? 隠れて入れても駄目だから」



「何でそこで威張るんですかっ。ちゃんと愛珠を見習って何でも食べてください!」



「あははっ。隼人、トマト食べられないの?」



「うっ。……何か変に甘いの駄目なんだよっ」



「あっ、トマトが泣きますよ」



「トマトが泣くってなんだよ」



二人の会話に笑ってしまう。

にしても仲良くなるのはやいなあ。
麻由子のコミュニケーション力半端ない。





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