旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
元々曾祖父が建てた家だと教え、ちょっと事情があり、誰でもいいから任せるという訳にもいかない…と理由を話せば彼は目を輝かせた。


「それなら尚のこと未彩ちゃんはどうだ?丁度年頃だし、嫁に貰ってくれるなら紹介してやるぞ」


自分では駄目なんだろう…と理解した様に言いだす彼に少し慌てた。


「えっ!?でも、俺なんて相手にしないかも、なんでしょ」


年が十も離れてる、とさっき言ってたじゃないか。


呆気に取られて彼を見返すと、コップ酒を片手にしている永井さんは、そうなんだけどさぁ…と呟き、徐ろにそれを傾けて飲み込んだ。


「…でも、庭づくりに関してはえらく興味が深いんだよな。仕事も熱心だし、顔もイケててまあ美人だぜ」


ニヤケて話すもんだから、てっきり酔った上での冗談だろうと思った。
俺はご機嫌な調子の永井さんを見つめ、この場は雰囲気を壊さないでおいた方がいい…と感じた。


「そう言うのなら、少しは会ってみたいですね」


相手は仕事上の顧客だし、変に断るのも悪いと思い冗談に乗った。
その時だけの会話で済むだろう、とそう思ってたんだが……。


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