旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「未彩ちゃん本当にいい子なんだよ。だから、先生もきっと気に入ると思う」


太鼓判を押してくる相手に困惑しつつ、いや、しかし…と言おうとした。
だが、彼は……


「それにな、まあちょっと訳があって、いい相手がいたら縁談を組んでやりたいと思ってたんだよな」


会社の男共には手を付けさせたくないんだ、と親心を示され、急に言葉に詰まった。


「先生が会ってみて好みじゃないと思えば断ってくれてもいいんだ。でも、取り敢えずは一度、会ってやって欲しい」


熱心に勧められ、流石に断りきれなくなる。

俺は迷いながらも一応はスケジュールを確認して、週末なら何とか時間が空けれる…と返事した。



「そうか。だったら未彩ちゃんにもそう言っとくよ」


有難い、とお礼を言われて電話を切る。
俺はその嬉しそうな声を聞きながら大いに溜息を吐き、余りにも楽観過ぎた…と自分の言った言葉を後悔した。



「誰でもいいという訳には、いかないんだぞ」


そう呟きながら思い出すのは祖母の言葉だ。

あの家を受け継ぐと決まった時、祖母は俺に過大な希望を寄せていた___。


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