旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。

「そんなあの子に変な虫が付くのは困るんだよな。
あの子の祖母さんは俺の古い友人の連れ合いで、うちに入社すると決まった時、『呉々もお願いします』と頭を下げられたんだ。
だから俺は、その信頼を裏切るわけにはいかねぇんだよ。あの子に変な虫が付く前に、ちゃんとした相手を当てがってやりたいんだよ」


如何にもそれが俺という雰囲気で語り、息を吐き出すとこう続けて喋った。


「それにな、あの子には夢があるんだ。入社して一度、その夢を叶えようとした時期があったんだけど、ちょっとタイミングが悪くてチャンスを逃してしまってな。
それ以降ずっと時期を見てると言うか、なかなか踏み切れない様子でいるみたいなんだ」


だから出来ればその夢を俺に叶えてやって欲しい…と話す永井さんを見つめ、それは一体何なんですか？と訊き返した。

永井さんはこっちを見ると、未彩ちゃんには俺が教えたことは内緒だぞ、と言って話しだした。

それが、この店に彼女が来る前に聞いた、話の全てだ＿＿＿＿。