旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
なるほど。永井さんが「可愛い」と絶賛する訳か…と納得して頷いた。
それに気づいたように振り返った永井さんはしたり顔で、ニヤけながら、「紹介するよ」と声を発して彼女の名前を教えた。


そして、直ぐに退室すると言うから俺は驚いて彼を見返した。
同じ様に真向かいに座る彼女も、「待って」という雰囲気で焦っている。


けれど、その瞬間には俺は腹を括っていた。
今日のこの出会いが縁で、彼女にあの庭を任せることになるかもしれない…とそう直感したんだ。



二人だけになった後、落ち着いて話そうと思い、ビールを頼んだ。
それを彼女に注いでやりながら、話の取っ掛かりを探した。


ガーデンプランナーになったきっかけを聞いたのは単なる思いつき。
彼女の祖母が、社長の旧友の連れ合いだという話を思い出したからだ。


すると、やはり彼女は祖母のことを持ちだした。
想定内だな、とそう思ったんだが……。


「私のおばあちゃん、田舎で一人暮らしをしてるんですけど……」


ちょっと違う話が始まってポカンとした。
でも、話の途中で何かを思い出してる様な顔つきに変わり、ふぅん…と何かが過った。


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