旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「あの時、完全に一目惚れしてたんだよな」


多分そんなことを彼女は知らない。
俺が自分の条件に彼女が合っている、とそういう言い方をしたから。


それで、その為に自分と結婚した、ときっと今でも思っている筈だ。
だから、いつまで経っても俺は彼女にとって、心許せない相手のままなんだ___。



「あの男は、『克っちゃん』なのにな…」


ガタイのいい同僚が思い浮かんで悔しくなる。
あいつと同じ場所に立ち、この人は俺の大事な妻だ、と胸を張って言ってやりたい。


手を出すな、と忠告したい。
そして、彼女にもっと俺を頼って欲しい……。


「だけど、彼女にとって頼り甲斐のある男になる為にはどうすればいいんだ」


寝顔を見つめながら、こんなに一人の女性を夢中にさせたいと思ったことはない、と感じた。


未彩にとって、自分はまだ夫にもなりきれない相手なら、先ずは外側から埋めていくしかないのか…と体を抱き寄せて考え込んでしまった___。



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