旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
甘い旦那様の新たな秘密?
翌朝目覚めると、白衣を着た医師が私の手を取り、脈拍を測っていた。


「…ああ、目覚めましたか?」


視線を向けるとふわっと微笑み、具合は如何ですか?と訊ねてくる。


「はい…もう…大丈夫です…」


ぼぅっとしたまま返事をして見ると、腕に刺してあった点滴は外れ、側に立っていた点滴棒も片付けられていた。


「昨日は午後から急に暑くなりましたからな。熱中症で病院へ来る人も多くて結構慌てました」


気象庁によると、フェーン現象による一時的な空気の高温状態があったらしい、と話すのを聞き、気象に詳しくない私は、そうですか…と頷くしかない。


「それにしても、皆藤君があれほど慌てて電話してくるのは初めてでしたよ」

「え?」

「『妻が庭で倒れてたんですけど、どうしたらいいですか!?』と叫ぶように言い放ってきて、『グッタリして返事もない!』と叫ぶもんだから、こっちの鼓膜が破れるかと思いました」


笑い出しながら話す医師は、いつも皆藤君には収支報告等でお世話になっていると教えてくる。


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