旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「あっ…」


息を吸い込むように声を発して、走ってくる相手を視界に収める。



「離せっ！」


ぐいっと克っちゃんの肩を掴んで引っぺがす相手は、振り向いた彼に向かい、「妻に手を出すな！」と凄い剣幕で怒鳴った。

克っちゃんは一瞬何が起きたのか分からない感じで、後ろに立つ人のことを見つめてる。
相手も彼をギロッと睨んで、お互いに身じろぎもしないで見合っていた。



「……旦那様のお帰りか」


それでも急に理解出来たらしい克っちゃんはクスッと笑い、苦笑を始めながら、タイミングいいな、と続けて視線を私へと走らせてくる。


その時私は、驚きと同時にすごい安堵感を覚えていた。
彼がいいところに帰ってきてくれたと喜ぶ気持ちと、走り寄りたい安心感とが胸の中に湧き出していた。

でも、その気持ちを踏み躙るかのように、克っちゃんが不要な言葉を吐き出してしまい＿＿。



「あんたさぁ…」


不敵な笑みを浮かべる克っちゃんに彼は挑むような目線を送り続ける。
私は彼と克っちゃんを見比べ、何を言うつもり？と顔を見遣った。


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