旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。

仕切り直すには……

玄関の扉を開けた俺はとても不愉快だった。

先ず第一に、あの野郎が俺に言った言葉が胸にグサリと突き刺さって抜けなかった。

それに、あの男の後ろに立っていた未彩はそれを否定もせずに戸惑う様な表情でいて、あいつに「やめて！」と叫んだのがショックだった。


俺のことを本当にどうとも思ってなかったのか…と感じてしまった。

それは最初から分かってたことだったんだが、最近は少し別の感情も生まれ始めてるんじゃないのか、と思い込んでたから落ち込んだ。


（別の感情が生まれてるなら、今日みたいな隙を作ったりしないだろ）


あいつは同僚と言いながらも未彩を気に入ってるんだから。
そんな相手に庭づくりの手伝いを依頼して、二人きりになるなんてことをする訳ないだろ。


（結局のところ、未彩さんは俺のことを好きでも何でもないんだよ）


イラっとした気持ちをあいつの前では何とか堪えた。
平静を装って奴を追っ払い、何とか自分が彼よりも上位に立とうと思ったんだが。


（この怒りだけは何だか追い払えない）


馬鹿だな…と自分に呆れてくる。
未彩さんに何を期待をしても、全部無駄だって分かってるだろ。