旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
完成まで後わずかなのに…と思うとやはり悔しい。
ちゃんと出来上がるのを待って、彼に見て欲しかった……。



「これは…」


無言だった彼がやっと口を開く。
私は覚悟を決めて彼の隣に立ち、自分の謝った理由も含め、リフォームし始めた理由を教えた。


「前に一人で庭を見てる時、影が多くてとても暗く感じたんです。月の光も届いてないように見えたし、折角手入れしたらもっと綺麗になるのにと思うと勿体なくて」


それで、枝葉の伸び過ぎた部分を伐採し、大きくなり過ぎた紅葉を蹲の後ろに植え替えた。
それから敷石を敷き替え、露出した土の上に玉砂利を敷いて枯山水風にしようと思っている…と話した。


「ごめんなさい。皆藤さんに黙って、勝手にリフォームしちゃって」


黙ってたのには訳がある。
でも、それを言うのは烏滸がましい気もする。


ショボン…と肩を落とす私の話を彼は黙って聞いてた。
それからガラス戸に近付くとじっと庭を見て、思い切ったようにガラリとサッシを開放。

すると、庭には涼やかな五月の風が吹き渡ってて、枝はその風に揺れ、葉は擦れ合いながらサラサラと優しい音色を響かせていた。


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