旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
それはどこか変じゃない?と言いたげな表情の彼を見返す。
だって…と言いながら躊躇う言葉は、スーパー税理士と呼ばれる人に言ってはいけないだろう、と遠慮していたものだ。


「だって、皆藤さんは庭に興味がないみたいだし、忙しそうで、庭の手伝いをして…とか、なかなか言いだし難かったんだもん」


庭づくりを任されたのは私。
好きなようにしてもいい、と言われた時点で、彼は手伝う気などないんだ…と勝手に決め付けていた。


それに、あの香りのことも気になってたし、そんな香りを見に纏ってくる彼に、自分の大事なことを手伝って貰うのも嫌だった。


だけど、それは自分が何もかも恐れて避けてただけだ。

彼の気持ちも聞かず、理由も聞かず、自分の世界に逃げてただけ__。




「未彩さん…」


名前を呼ぶ彼の方へと目線を上げる。

彼にあの香りのことを問いたい。
そして、スッキリしたい。

ハッキリしたら、何かが壊れてしまうかもしれない。
でも、もう知らずにいるなんて無理__。



「私、皆藤さんに訊きたいことがあるの!」


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