旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
「挙式の日に君のことをお願いされた。
未彩にはずっと先延ばしにしている夢があるから、いつか行きたい時と本人が願った時に、さっと旅立てるようにしてやって欲しいって。

だから、その願いを叶えなかったら、お祖母さんはきっと自分の病気の所為だと悔やんで、悲しい思いをするだろうと思うんだよ」


自分も祖母の願いを未彩には叶えて貰ってる。
だから、今度は君の祖母の願いを俺が叶える番だ、と脩也さんは笑いながら言うけど__。


「でも…」


ずっと夫婦だけって訳にはいかない。

新婚初日にはそういう意味のことを言われたし、自分の夢だけの為に彼を振り回したり、家族を巻き込んだりなんて出来ないと思う。


「ん?」


顔を覗き込む相手が窺う。
その申し出は確かに有難いし、言うように一緒に渡英して、ガーデニングを学べれば尚いいとは思う。だけど……


「もし、子供ができたら」


本家の長男だから子作りは急ごう…と言ったのは彼だ。

その言葉通りに妊娠したら、今の様な庭づくりは出来ないし、かと言って忙しい脩也さんに、代わりに庭づくりや子育てをしてね、とも言い難い。


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