旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。

「それだよ」


人差し指の先が俺の手元に向けられ、ビクッとしたまま、おばさんの顔とその指先が差すものとを交互に見つめた。


「タバコ?」

「そう。未彩ちゃん、それを吸う人が嫌いだって前に言ってたことがあるんだよね。
前からヤニの香りが苦手で、それを嗅ぐと変に気分悪くなって、吐きそうになる…と話してことがあったね。
…あんた、それを吸った手でいつも未彩ちゃんの頭をグリグリ撫で回してただろ。
未彩ちゃんそれがすっごく嫌いみたいでさ。あんたがいない所で、ソッコーでトイレに行って髪濡らして拭いてたこともあったんだよね」


その点、あのスーパー税理士はタバコも吸わないし、見るからに清潔そうでイケメンだしねー、とまた相手を褒めちぎる。


「まあ最初から勝負付いてたって言うかさ。変な虫がつく前に、あの人に未彩ちゃんを紹介したのは社長の思惑が成功したとしか言いようがないね」


あの時の未彩ちゃんはまだ男も知らない純な感じで、仕事がら図体も態度もデカい男連中しか見たことなかったから、あの洗練された雰囲気に酔って、結婚を決断したところもあったんじゃない?と推測を始める。


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